審美歯科とタバコ
危険!サードハンドスモーク~吸う人も吸わない人も危ない理由
■タバコを吸っている人の部屋にいるだけで、吸っている人と同じく身体に悪いって本当?
■タバコを吸っている人の車の中は、身体に悪いって本当?
■タバコを吸っていなくとも、タバコを吸っている人のそばにいるだけで、ヤニってつくんですか?
サードハンドスモーク(Thirdhand Smoke)
知らず知らずのうちに、ニコチンをはじめとするタバコの有害物質が、建物の壁やじゅうたん、家具や自動車の内装などにしみ込み、煙が消えた後もそれらから放出され続けることによって受ける健康被害を『サードハンドスモーク』といいます。
「タバコの煙暴露に安全なレベルは存在しない(There is no safe level of exposure to tobacco smoke.)」
という事実を強調する論文が「Padiatrics」という雑誌に発表されました。
この論文で新たに危険を訴えているものは、セカンドハンドスモークではなく、サードハンドスモークです。
セカンドハンドスモーク
・受動喫煙(セカンドハンドスモーク)は喫煙する人の煙が拡散して、近くにいる人は喫煙者でなくともその煙で心臓血管系の病気、脳卒中、流産、新生児無呼吸症候群などのリスクを負うことです。
サードハンドスモーク
・サードハンドスモークは、煙が消失した後、煙に含まれる物質が衣類、部屋のカーテン、ソファ、車のシートなどに付着し、それが汚染源になって第三者がタバコの有害物質に暴露されることです。
サードハンドスモークに含まれる有害物質
・ハイドロジェン・シアナイド(化学兵器に使用される物質)
・ブタン
・トルエン(シンナーに含まれています)
・ヒ素
・鉛
・一酸化炭素
・ポロニウム210(2006年にロシアのスパイ、アレキサンダーV.リトビネンコ暗殺に使用された高度放射性発がん物質)
また「Pediatrics」に発表された論文では、セカンドハンドスモークの知識を持っている人は多いが、子供のいる家庭を完全禁煙にしていない家庭が多くあり、子供がいない時間はタバコを吸っていたり、喫煙者が換気扇の下で喫煙していることを問題にしています。
このような状態では、赤ちゃんや子供を有害物質から守れません。
サードハンドスモークの概念を知り、家族全員が禁煙し、有害物質をシャットアウトすることが必要です。
サードハンドスモークの対策
タバコを換気扇の下で吸うのはNG!
ベランダで吸うのもNG!
空気清浄機は、タバコの有害物質を除去する効果は期待できません。
対策
1 タバコを吸うときは、必ず屋外で吸って、30分は屋内に入らない。衣類はすぐに脱ぐ。
2 喫煙者がいる家庭からいただいた衣類やおもちゃはよく洗う。
3 禁煙のお店のみに入る。
禁煙したら、歯茎から血が出るようになった。歯茎から血が出る理由 ニコチンの危険性
・タバコをやめたら、歯みがきする時、歯ぐきから血が出るようになった
・前は平気だったのに、最近歯ぐきから血が出る。(半年前から禁煙している)
質問 患者さんに「タバコをやめたら、歯をみがくと血が出るようになって。。どこか、腫れていますか?」とたずねられました。
答え 答えはさいごにあります。
ニコチンが歯茎に与える影響
まず、ニコチンが歯周組織に与える影響を知って下さい。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯肉が炎症を起こしても出血が抑えられ歯周病の症状のひとつである出血が隠れてしまい、気づかないうちに進行してしまうことが多いのです。
さらに、歯周治療をしても非常に治りにくいのです。
ニコチンは歯根面を覆っているセメント質とよく結びつく性質があるために、せっかくスケーリングやルートプレーニング(歯に付着した沈着物を機械的に除去、歯根面に浸透した有毒物質を取り除いて滑沢にする操作)を行っても、喫煙が継続していると、この治療の術後にニコチンがただちに歯根面に結合してしまい、歯周治療の効果が台無しにしてしまいます。
また禁煙をしても、歯根面の内部深くに浸透したニコチンの影響を取り除くためには、何回かにわたるルートプレーニングが必要です。
このような局所的な有害作用と同時に全身的に個体の免疫系を傷害し、その機能を低下させます。
これらの相乗作用によって、歯周病が悪化したり術後の治癒が悪くなるのです。
■ニコチンによる悪影響
- ニコチンは血管を収縮させる作用があります。歯肉が炎症を起こしても出血が抑えられるため、気づかないうちに症状が進行します。
- ニコチンは免疫機能を低下させ、歯周病への抵抗力も下がるので歯周病を悪化させます。
- ニコチンは歯根面を覆っているセメント質とよく結び付く性質があるため、スケーリングやルートプレーニングなどの歯周治療の効果を低下させてしまいます。
質問 「たばこをやめたら歯茎から血が出ます」
答え 禁煙中は、歯肉炎・歯周病であってもニコチンが血管を収縮させているため、出血が抑えられています。禁煙したので、本来の歯肉炎・歯周病の症状の出血が現れたのです。
禁煙したら歯茎が健康になる効果
1 禁煙後数週間してから、タバコの影響を受けない本来の歯周組織の反応がみられるようになります。
2 禁煙後1年くらい経過すると、もりもりしてロール状になっていた歯肉が、本来の解剖学的な形に回復してきます。
3 メラニン色素沈着の減少(長期間を要し、少しメラニンが減少します)
4 全身への健康回復への波及効果があります。
関連記事
歯茎が黒い!大人も子供も歯茎が黒い!写真あり
「歯茎が黒い!」といらした大人の方です。
↑大人の方は、タバコが原因の色素沈着です。
受動喫煙
親がタバコを吸っていると、受動喫煙で子供の歯肉も黒くなってしまいます。
小学校低学年の子供の歯肉
小学校低学年の子供の歯肉
北海道浜頓別小学校での調査によると、親がタバコを吸う子供の79%に歯肉に黒い着色が見られたとの報告がありました。
(清水央雄先生資料より 1998)
関連記事
タバコを吸って感じた不調 アンケート
美レンジャー 喫煙経験のある女性 263人にアンケート
タバコを吸って感じた不調 ランキングTOP5
1 歯が黄ばんだ 30.4%
2 喉がイガイガするようになった 21.3%
3 口臭が強くなった 19.0%
4 顔色がくすんだ 12.9%
5 肌にハリがなくなった 11.8%
歯の黄ばみは、タールが舌や歯、歯垢、歯石に付着し、茶色いシミをつくってしまうのです。
まだまだある!喫煙リスク
1 寿命が短くなる
厚生労働省の『最新タバコ情報サイト』によるとイギリスのR.ドール博士の研究では、喫煙者は非喫煙者より約10歳ほど寿命が減ると判明しています。
2 呼吸器系へのダメージ
3 循環器系へのリスクを高める
4 ガンの原因となる
背が低いのって、タバコのせい?子供にタバコが悪い3つの理由
背が低くなるタバコ
たばこの疑問
Q1 小学生でタバコを吸うと背が低くなるって本当?
←K.B.Lall et al. 1980年
タバコを吸わない子供
タバコを吸う子供
タバコの影響を受けた脳が、成長ホルモンを十分に分泌できなくなり成長期にある子供たちは影響を受けます。
Q2 タバコを吸い続けると口の中に色がついてしまいます。色がつくのは、どの部分でしょうか?
- 歯
- 舌
- 歯肉
- 1~3すべて
答え 4
受動喫煙
両親からの受動喫煙で歯肉が黒ずんでしまったと思われます。
親がタバコを吸っている10歳の子供の歯肉
【写真 社団法人 日本学校歯科医会より】
子供にタバコが悪い3つの理由
Q3 小学生がタバコを吸うと身体にどのような影響があるでしょうか?
- 身長の伸びが悪くなる
- 運動能力が落ちる
- 学習能力が落ちる
- 1~4すべて
答え 4
喫煙前後にテストを実施した結果
フィルター付きタバコ
フィルターなしタバコ
グラフの結果
1 タバコを吸った後は、一酸化炭素によって脳の働きが低下します。
2 考える力や記憶力にも悪い影響がおきやすくなります。
3 また一酸化炭素の作用で酸素の運搬能力が低下し、体力や運動能力、特に持久力の低下がみられます。
一流のアスリートはタバコは吸いません。
関連記事
<<この記事を読んだ方は、子供のむし歯についても読んでいます。
背を伸ばす栄養素
背を伸ばすためにはカルシウムや牛乳と考えがちですが、そうではありません。
1番大切な栄養素はタンパク質です。成長に必要な成長ホルモンは筋肉で作られます。筋肉を作るためには、タンパク質が必要です。
タンパク質
肉
魚
卵
チーズ
大豆製品
+カルシウム・亜鉛・マグネシウム・適度の炭水化物でよい筋肉がつくられます。
栄養のバランスよく食事をとると背が伸びるという意味がわかりますね。
たばこと歯周病って関係あるの?歯周病の自覚症状9項目
歯周病は、歯の病気ではなくて、歯を支えている(歯肉、歯根膜歯槽骨)の病気です。その歯周組織が歯周病菌によって破壊されていく病気です。歯垢が付着すると歯と歯肉の間に深い溝ができます。その中にさらにプラーク(歯垢)がたまり細菌が繁殖して歯石ができます。この歯石が歯周病の原因です。
歯周病が進行すると歯槽骨が破壊され、歯が動き出して抜かなければならないこともあります。歯周病の恐いところは、初期のうちは痛みがあまり出ないということです。自覚症状がないうちに進行していることが大半です。
歯周病の自覚症状
1 歯をみがいたとき、出血する
2 歯肉にむずがゆい感じがある
3 口の中に嫌な臭いがある
4 朝起きたとき、口の中が粘る感じがする
5 物を食べるとき、歯がぐらつく
6 食べ物が歯の間にはさまる
7 歯肉がときどき腫れて痛む
8 歯がしみる
9 歯が長く伸びた感じがする
1つでもあてはまるなら歯医者さんで診てもらって下さい。
また、たばこと歯周病の間には関連性のあることがわかってきました。喫煙者の歯周病は、若い年齢で発症し進行が早く、治療しても再び悪くなりやすいのが特徴です。喫煙は3つの点で歯周病の進行を助長させます。
たばこの害とビタミンCの関係
- 喫煙によって末梢血管の収縮が起こり、血流を止めてしまい血液配給が阻害されます。
- 喫煙は動脈硬化を促進し、これも血流を阻害します。
- たばこを1本吸うごとにレモン1個分のビタミンC(25mg)を失います。
ビタミンCは成人病、老化、動脈硬化、癌から風邪まで防ぐ広い作用をもっています。
ビタミンCはコラーゲンという結合組織をつくるのに重要な役割を持っています。骨の重量の90%はコラーゲンでできています。
組織をつなぐセメントのような役割をするコラーゲンの形成が阻害されると、骨も歯槽骨もボロボロになります。こういった点でビタミンCは、骨の形成、強化には不可欠であるといえます。
骨粗鬆症の人がタバコを吸うと危険な理由
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞のバランスが崩れると発症する病気です。
簡単にいうと、骨の量が著しく減少して骨がスカスカになり、容易に骨折する状態になることです。
左 健康な骨の内部 右 骨粗鬆症にかかった骨
骨粗鬆症を促進するタバコ
日本人を代表する大集団の成人約27万人を17年間継続観察した平山雄先生の報告によると、女性の大腿骨頸部骨折について、生活習慣との関係で最も著しい関連性がみられたのは喫煙習慣でした。
タバコを吸わない人の危険度を1とした場合、1日1~14本吸う人で約2倍、15本以上吸う人で約4倍という具合でタバコを吸えば吸うほど骨粗鬆症になりやすいといえます。
とくに、女性はタバコを吸えば吸うほど骨粗鬆症にかかりやすくなります。
骨粗鬆症の口腔内
ブリッジ装着後4年の口腔内
骨粗鬆症の影響で歯肉とブリッジの間に隙間が、できはじめています。
ブリッジ装着後20年の口腔内
骨粗鬆症の進行が進み、骨が吸収してくるため、 根っこが露出してかなり隙間が目立ちます。
【写真 日本禁煙推進医師歯科医師連盟会員 石井 正敏先生資料より】
■骨粗鬆症の予防
緑黄色野菜、魚介類、味噌汁、牛乳の摂取頻度が高くなるほど、大腿骨頸部骨折のリスクが低くなることは示されています。
禁煙と緑黄色野菜の積極的な摂取、そしてカルシウムに富む食生活をすることが適度な運動とともに、骨粗鬆症の一次予防として非常に重要であるといえます。
喫煙は、歯周病の最大の危険因子です。
タバコを吸っていると骨粗鬆症が促進され、その結果、歯槽骨の吸収と喪失が早まると考えられます。
関連記事
タバコが口腔内に及ぼす5つの影響とタバコがやめられない理由
5/31 世界禁煙デー
2009年12月19日にWHO(世界保健機構)は2010年5月31日の世界禁煙デーのテーマを『Gender and tobacco with an emphasis or maketing to woman女性のタバコの売り込みをやめさせよう』と決めました。
タバコの煙
タバコの煙には、わかっているだけで4000種類の化学物質が含まれています。そのうち有害物質と認定されているのは200種類以上、うち40種類以上が発ガン物質です。
タバコの煙には、本人が吸う『主流煙と、タバコの先から立ち上がる『副流煙』があります。
副流煙のほうがニコチンで2.8倍、一酸化炭素で4.7倍などの主流煙より毒性が強く、発ガン物質もたくさん含まれています。
また、副流煙は強いアルカリ性のため、主流煙より粘膜刺激性が強くなります。
置きタバコの煙で目や喉が痛んだ経験のある方も多いでしょう。
この副流煙を、自分の意思とは無関係に吸い込んでしまうことを『受動喫煙』と言います。
写真 松岡晃先生 【喫煙と歯肉】より
受動喫煙
受動喫煙によって病気にかかる危険度は、肺がんで1,19倍、心臓病で1.25倍にも高まります。
妊娠中の喫煙が低体重児の出産、早産や流産の原因となる事は広くしられていますが、母親が喫煙者でなくても、近くにタバコを吸う人がいれば、赤ちゃんは胎内にいる時から受動喫煙の影響を受ける事になります。
こうした赤ちゃんは生まれてからも発育が遅れたり、気管支喘息や気管支炎などにかかりやすくなるほか、乳幼児突然死症候群の危険性が5倍近くになるという研究報告もあります。
口腔内への影響 5項目
タバコは口腔内にも大きく悪影響を与えます。
1主な歯科的弊害は歯周組織の破壊
2インプラントの成功率低下
3免疫機能の低下
4悪性腫瘍(癌)の誘発
5口臭
などです。
喫煙率が、1日10本以上になると歯周病になる危険率が5.7倍に跳ね上がると報告されています。
タバコが口腔内に与える危険 3項目
1.免疫力・修復機能の低下
喫煙していると、歯肉の免疫力や修復機能が低下してしまいます。また、タバコに含まれるニコチンの作用より、末梢血管が収縮してしまうと、<血液循環が悪くなり、歯周病になりやすく、治りにくいという状態に陥ってしまいます。
2.インプラント手術成功率低下
人工歯根を顎の骨に植えるインプラント手術の成功率も喫煙者では約10%低下すると言われています。
これも血流が悪いことが成功率低下の原因になる為です。
3.歯肉の変色
歯肉がメラニンの沈着により黒ずむのはもちろんのこと、副流煙によって、親がタバコを吸っている子供の約80%にも歯肉の変色が見られます。また子供の場合は副流煙により、むし歯が2倍になると言われています。
どうして禁煙は難しいの?(たばこをやめられない理由)
タバコに含まれているニコチンは、ヘロインや覚せい剤と同様の薬物(ドラッグ)です。
依存性は大変強く、喫煙習慣の本質はヘロイン級の薬物依存症なのです。
また、食後やコーヒーを飲むときに条件反射のように吸ってしまう『習慣性依存』(心理・行動的依存)もあります。
このようにタバコはニコチン依存と習慣性依存といった2つの依存を引き起こします。
禁煙にはもちろんあなたの意思も大事ですが、『依存症を治療する』という意識が必要です。
関連記事