ゴールドの詰め物の2つの魅力
1 その1つに抗うしょく性〈むし歯を抑制する)があげられます。
理由があり、古い金のつめものをはずしてみると中にむし歯は、ほとんどみられないといったケースがほとんどです。金イオンが むし歯を抑制すると考えられています。古い教科書には、金から放射能?!が出てむし歯にならないと書かれていました。もちろんそんなことはありません。
写真: 古代エジプト展
2 Goldの魅力はそれだけでなく、その硬さにあります。
歯と同等の硬さで使っているうちに天然歯と同じようにすり減っていきます。加齢とともにしわができ、足腰も弱くなります。これは、自然の現象です。自然の状態で少しづつ、機能が低下していくのも当たり前の事です。
顎関節の動きも若年~中年~老年とかわっていきます。
硬すぎてすり減らない金属とすり減った自分の歯がアンバランスに口腔内にあるよりも、天然歯と同じような硬さで同じようにすり減っている金属は、天然歯と同じように動いて働いてくれます。
ですからGoldは顎関節が近い奥歯の治療に適した材料ともいえます。
金歯の治療の進め方
Goldインレー
「金属が取れてしまった」と来院された患者さんです。
■印象
中に少しカリエス(むし歯)がありましたので除去し、写真は印象(型取り)前の状態です。
定義:下顎の運動は、顎関節が支点となり、筋肉がそのエネルギーを提供し、靭帯が運動を制限し、中枢が運動全体を制御するという仕組みでなりたっています。
人間の顎は強くかみしめると、約60kgのパワーを発揮します。
また人間の顎の構造はクルミ割りの道具に似ていて、顎関節に近いところには強大な力が加わりますが、そこから離れると力は弱くなる傾向があります。
下顎のSET物は、非常に強い力に問題なく耐え、機能することが求められるのです。
人間の神経・筋・生理機能は、多少の問題があっても何とか機能しようと各パーツで代償してまかなってくれます。
換言すれば、環境に適応すべく代償として形態変化していくのが生体なのです。
しかしその代償にも機能面からみた限界があり、一定の範囲を超えた代償は生体に不調和をおこしていきます。
要するに、固い銀歯などの金属を入れたら、かみ合う自分の歯を擦り減らして咬合との調和を試みようとするのが生体です。
■Goldの選択理由
今回の治療は、むし歯の除去に始まり、咬合の再構築に終わるのですが咬合力(前方・側方運動など)を含め、抗うしょく性・生体親和性・機能性にも優れたGoldを選択するのが下顎運動がスムーズに行えるベストな選択です。
■試適
口腔内でGoldを合わせてみます。丸くポッチとしたものをリムーバブル・ノブといいます。
適合のよいGoldのSET物をはずす時に引っかけて取る突起です。
これを付けておくとどんな適合のよいSET物でもうまくはずすことが可能です。
その結果、試適や咬合調整がうまくはかどりチェアータイムの短縮がはかれます。
■セメンティング
セメンティングは治療の最終段階の重要なステップです。
最近主流になっている合着・接着用セメントを大別するとグラスアイオノマー・セメントとレジン系セメントの2種類になります。
とくに精度の高いGoldとグラスアイオノマー・セメントのコンビは相性抜群です。
グラスアイオノマー・セメントの利点
1 神経に対する刺激が少ない
2 歯質に化学的結合性がある
3 抗うしょく作用がある
4 知覚過敏に対する治療効果
5 封鎖性が良好
など多くの利点があげられます。
しかし、短所は硬化時に感水すると性質が劣化するという点です。
そのため歯面清掃・消毒後、歯牙を乾燥させ唾液にふれさせないためワッテを入れておくので、
患者さんには少しの間辛抱していただきご協力願いました。
口腔内の状態が各個人によって異なるため、治療期間・費用が違ってきます。
歯ぎしりしている人はGoldの詰め物がよい理由
定期検診でいらっしゃった患者さんです。
H9年Goldインレーセット
14年後H23年の現在の状態です。
マイクロスコープ強拡大
14年前「一番よいもので治療して欲しい」と言われゴールドインレーを選択しました。
14年経ち、入れた当時の隆線や咬頭の形はなくなっていますが天然歯にもブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)のあとである咬耗が見られます。
《審美歯科と知覚過敏・歯ぎしり・くいしばり》のところにも書きましたが、咬合の力は強い時は、60kg以上に及びます。
口腔内、口腔の周りの筋肉の緊張が長く続くとそのストレスを開放しようとして、歯ぎしりが起こるといわれています。
人によっては、一晩の歯ぎしりは一生の咀嚼に相当するほどの力が加わっていることもあります。
この患者さんの天然歯もすり減っていますが同時にGoldインレーも形を変えなじんでいます。
Goldでなく固い金属を使っていたら対合歯(かみ合う歯)を必要以上にすり減らしていたかもしれません。
生体は常にストレスの中にあり、簡単にそのストレスに適応してくれる場合ばかりではありません。
個人の口腔内に合った処置また生体に優しい材料を使うことが、歯の健康と身体の健康にもつながります。
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ゴールドの詰め物はいつまでもつの?
保険適応外のゴールドの詰め物を選んで、どのくらいもつのか気になるところです。
写真で説明していきます。
1 ゴールドアンレー
H9年にセットしたGoldアンレーです。
14年後H23年の現在の状態
写真はH9年にGoldアンレーをセットした患者さんの口腔内です。
この方は奥にもう1本あるはずの歯を失っなっていて、その欠損部位には
「入れ歯もインプラントもどんな処置もしたくない、今のままで十分。」という方でした。
奥歯の本数が減ってくると残りの歯に負担がかかってきます。
全体の口腔内を拝見し、笑った時に金属が見えないGoldアンレーを選択しました。
マイクロスコープ強拡大
H9年当時、硬化処理したGoldが14年経ったH23年現在では咬合によるダメージを受け形を変えています。
この症例にGoldではない別の固い金属を入れていたらどうなっていたのか?
たぶん対合歯(かみ合う歯)は、過剰に擦り減っていると思います。
また固い金属を長期間入れ、咬合を繰り返していたら歯を支える骨に負担がかかります。
患者さんの中には「自費治療は一生もちますか?」と問われる方がいます。
欠損部位や口腔内環境、患者さんの生活習慣によっても違ってきます。同一部位に同じ補綴物を装着しても患者さんによりその歯の寿命は異なります。
自費治療であっても『賞味期限』があると思います。
■継続的な力による運動は危険!
歯科医が思う臨床の中での最大の敵は、むし歯でも歯周病でもなくブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)による強い力の加わった継続的な運動です。
むし歯も歯周病も手強い相手ではありますが、患者さんが自覚してくれます。
歯科医とともに一緒に闘ってくれます。
しかしブラキシズムは、まだまだ患者さんの自覚にいたるまでになっていません。
このホームページで何度も書いています。
《審美歯科と知覚過敏・歯ぎしり・くいしばり》のところにもふれています。
固い金属を入れると生体が適合しようとして、対合の天然歯を擦り減らしたり、骨を吸収させたりすることがあります。
2 Goldインレー×2
定期検診にいらした患者さんです。
H12年に左上に2本のGoldインレー(詰め物)をSetしました。
現在H23年 11年後の予後です。
同じ患者さんの左下の写真です。
この方の口腔内はGoldの修復物での治療が多くあります。
口腔内全体を診て、上下、左右の全体のバランスを考えても左上はGoldの修復物で治療することがベストでした。
左上の小臼歯Goldの強拡大
左上1番奥の大臼歯Goldの強拡大
小臼歯に比べて大臼歯は、Set後11年経つと咬耗によっての変形のあとが見られます。
それほどの力で奥歯は咬むのです。
この患者さんは自己ケアもきちんとされ、実年齢よりも若々しく見える方です。
奥歯を失わない、また修復物を天然歯と同じような固さのGoldで治すということは、歯を大事にし長持ちすることにつながります。
奥歯をしっかり治療し、咬めるということは、若さにもつながります。
上下金属床のフルデンチャー(総入歯)
「入れ歯がゆるくなった」とのことで来院された方に、上下の入歯をつくりました。
■金属床のメリット
装着感がよいことです。
プラスチックの入歯と比較して強度的に強いので、かなり薄い丈夫な入れ歯が作れますし、形を自由に変えることも可能です。
ですから違和感の少ない快適な形状を求めることができます。
奥歯を金属の詰め物にすることの利点
ストレス社会の現代、多大な力による噛みしめ・歯ぎしりなどから破折、知覚過敏、歯周病の発症・進行などむし歯とは違うたくさんの問題をかかえるようになりました。
このHPで繰り返し奥歯は、噛みしめると約60Kgパワーがあるので、そのため奥歯の治療には優しい金属がベストで、強い力に耐え、機能することが大切であることも書いてきました。
マイクロスコープ強拡大 奥歯のゴールドインレー
HPを読んでいただき、「奥歯だから金に」という方が多くなりました。
これからも、患者さんに注意してもらいたいことをお知らせしようと思います。
噛みしめが強い方にゴールドの詰め物がよい理由
ゴルフとゴールドインレー
主訴:「最近、ゴルフ を始めて練習中にかみしめるから、右下奥歯が痛い。」
といらっしゃいました。
下顎舌側骨隆起
かみしめ、くいしばり、歯ぎしりのあとが随所にみてとれます。下の前歯の裏の骨がボコボコ盛り上がっています。強いかみしめが原因です。
上顎左側犬歯と頬側骨隆起
とがっているはずの犬歯はすり減っています。また骨はゴツゴツと大きくなっています。
強い力が慢性的にかかっている証拠です。
↑上顎右側犬歯
同じように犬歯はすり減って丸っこくなっています。
主訴の右下は、小臼歯の詰め物が壊れています。
その奥の大臼歯は、骨の吸収が進んでいないので徹底的な歯のそうじ、かみ合わせチェックで痛みが取れていくか様子をみていきます。
治療1 ナイトガードの作製
これ以上歯をすり減らさないために就寝中にはめていただくナイトガードを製作します。
また今回はゴルフの練習中も使うので通常の厚さよりもやや厚く製作しています。
※用途や口腔内の症状によって厚さを違えます。
※スポーツの時に転倒したら歯が折れないようにガードするものとナイトガードは、全く別ものです。
衝撃を受けても歯が折れないようにするには、かなり厚く歯を守るように作ります。
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<<この記事を読んだ方は、マウスガードについても読んでいます。
治療2 治療中
形成途中
壊れてしまっている小臼歯をGoldインレーで治療します。かみしめ、くいしばり、歯ぎしり等の症状がおきている方は、セラミックは適応外です。たとえ自費のGoldインレーをセットしたとしてもかみしめの横ゆれによって脱離してしまうことも考えられます。
まず治療の1番大切なことは、患者さんがくいしばり、歯ぎしり、かみしめをしているか自覚することが大切です。
↑Goldインレーのラバー精密印象
↑GoldインレーSET物
GoldインレーSET
- 歯ぎしり、かみしめ等の自覚
- マウスピースSET
- 全体のクリーニング
- むし歯治療(壊れた修復物の治療)
- 咬みあわせチェック
- 歯みがきの仕方の確認
上記の治療を行い患者さんの「右下奥歯が痛い。」が改善されました。
金歯にした方たちの口腔内状態
1 GOLDクラウンの試適
犬歯(糸切り歯)の奥の歯に仮歯が入っています。これを はずしてGOLDクラウンの試適をします。
セット物(GOLDクラウン)を試適してみます。ミラーで1周見て、確認し、隣接面(歯と歯の間)はデンタルフロスを通してぴったりしているか確認します。
きつすぎても、ゆるすぎてもいけません。
咬合紙(赤色の紙)をカチカチ咬んでもらって、高さの確認をします。
この方は、上下の歯の多くにGOLDが入っていますので、今回もGOLDのクラウンをセットしました。
GOLDは、天然歯と同じくらいの硬さなので硬すぎず、やわらかすぎず、歯にはよい状態が保てます。
健康を保ち、ブラッシングに注意していただきたいと思います。
2 奥歯2本の治療
最初いらしたとき
奥から2本目の歯は、頬側と咬合面がすり減っています。かなりすり減っているので、金属を用いて高さを上げる必要があります。1番奥の歯は、咬合面がすり減っています。
マイクロスコープ強拡大
1番奥の歯の咬合面のダイレクトボンディング治療を終えたところ。
3 右下 奥歯のゴールドインレー
「右下の1番奥の歯の詰め物が取れた」と、来院されました。むし歯になっています。
ゴールドインレー Set
各個人によって口腔内の状態が異なるため、治療期間・費用が違ってきます。
赤い印は、咬合のチェツクの後です。
GOLDの詰め物のメリット
・ 審美歯科なのに、なぜGOLD?
・ 金は、天然歯の色をしていません。GOLD色を好む方ばかりではありません。
・ それなのに、なぜGOLDがいいのか?
咬合力の問題です。
咬む力は、60㎏に及びます。金でも何年も口腔内に入っているものは傷だらけです。
天然歯もすり減っています。だからこそ天然歯と同じようなすり減り具合になる金の硬さが1番です。
保険の金属は、硬すぎます。
セラミックは、噛み方によっては、かけます。セラミックは硬くてすり減ってくれないからです。毎日、慢性的に力がかかっていると、経年の使用でかけます。
ダイレクトボンディングも保険のプラスチックほどではありませんが、経年使用ですり減ります。
GOLDは奥歯に適した材料といえます。
※ GOLDは、リタッチの必要がありません。