金属アレルギー
歯科金属が皮膚粘膜疾患の原因になることは、1928年に既にフライシュマンによって報告されていました。
1980年初め、中山秀夫先生が歯科金属のよるアレルギー疾患の症例を提示され、その後 金属アレルギーの研究と臨床に組織的に取り組むこととなり今日に至っています。
■金属アレルギーの臨床
金属アレルギーは口腔外に発症することが多く 接触皮膚炎、異汗性湿疹扁平苔せん、その他とされています。
■金属アレルギーの検査法
患者さんの侵襲が少なく多種類のアレルゲンを同時に調べることができるパッチテストが多用されています。この点は皮膚科やアレルギーの専門の先生方にお願いしたいと思います。
金属アレルギーの治療 抗原除去療法
歯科金属がアレルゲンではないかと疑われる場合、成人の口腔内には多数の填め物や金属冠が装着されています。視診ではその組成金属の種類は分かりません。
それぞれからサンプルを採取分析しアレルゲンを含むものを特定し、それのみを撤去、交換します。歯科的な抗原抗体療法で大変手間のかかる厄介な治療です。
こうした治療の後、早い場合は2~3か月で快方に向かいますが、1~2年を要することもあります。アレルゲン金属は分解されず、体内から排出されるのに時間を要するためと考えられています。
金属アレルギーの予防
金属アレルギーの1次予防は、現状では困難ですが上皮下の組織に金属が直接接するピアスは避けた方がよいでしょう。
2次予防は 皮膚科医と歯科医の連携の下、アレルゲン金属が判明した時は、これを含有しない材料で歯科処置を行うことです。
アレルゲンが 1番多い金属
1.Hg(水銀) アマルガム
2.Ni コア(土台に使われる金属)
3.Co 金属床
審美と金属
アマルガムが現在口腔内に入っている割合
ミュンヘン大学Reinhard Hickel教授論文より 2009
1985~88 | 1995~98 | 2005~08 | |
USA | 85% | 58% | 40% |
ドイツ | 75% | 30% | 20% |
スウェーデン | 40% | 5% | 0% |
ノルウェー |
私が歯科医になってすぐに疑問に思ったことは「自然な美しさとは何か?」ということでした。しかし当時は機能優先、むし歯治療優先で美しさとは機能であり、噛めることだったのです。
もちろん噛めることは第一条件です。
たとえばアマルガムは修復材料としていまだに使われていますが、私は水銀が入っているため、その危険性を感じてほとんど使ったことがありません。
最近は、技術、科学の進歩のおかげで、それまで難しいとされてきた審美と機能の回復を同時に可能にしました。科学の進歩のもと治療が行える今日は幸せです。
金属アレルギー症例写真
愛知学院大学歯科補綴学講座 池戸 泉美先生文献より
掌蹠膿庖症 最初の状態
綺麗になったてのひら
掌蹠膿庖症
皮膚科領域で治療がなされている掌蹠膿庖症も金属アレルギーが原因の一つとして考えられています。