早稲田大学 スポーツ科学学術院教授 鈴木正成教授文献より

からだの部分である口腔の健康問題は、全身の生理的機能によって支配されています。

骨粗鬆症

熟年になると骨粗鬆症が進行していきますが、それをストップさせるつもりでカルシウムやビタミンDなどを投与しても効果はみとめられません。

しかし、筋肉づくりを促すダンベル体操などのレジスタンス運動を実行すると、確実に骨粗鬆症の改善が認められるのです。
これは鉄筋役のコラーゲンの合成が、レジスタンス運動によって活性化され、セメント役のカルシウムが沈着できる条件が整えられるためです。 

※鉄筋役

骨はカルシウムでできてはいますが、鉄筋役を担っているのはコラーゲンというたんぱく質です。

※レジスタンス運動

ダンベル体操やスクワット、腕立て伏せ、腹筋などの運動は、筋力の維持や強化に役立ちます。

貧血

貧血の問題も同じです。ヘモグロビン値が低い貧血であると診断されます。

従来、鉄剤を補給する対策が一般的ですが、鉄はヘモグロビンというたんぱく質に連結して酸素と結合し、赤血球の体内移動に同行して酸素を配給して歩く役割を担当しています。

したがって、鉄はヘモグロビンというたんぱく質がどんどん合成されなければ、働くことができません。そこでレジスタンス運動でたんぱく質合成を活性化すると、骨髄での骨芽細胞合成が活発化し、あわせてヘモグロビン合成もたかまって、貧血が改善されていくのです。

貧血の人の口腔内

舌のつぶつぶがなく、平坦な状態になります。粘膜の抵抗力がなくなり、舌の痛みや味覚異常を感じることがあります。 

※鉄欠乏性貧血

血液の赤い色のもとである赤血球の中には、ヘモグロビンというものがありますが、このヘモグロビンは、鉄を含むヘムという色素とグロビンという一種のタンパク質が結合してできています。そして、肺で空気中の酸素と結合し、全身に酸素を送り届けてくれるのが、このヘモグロビンです。

したがって、鉄分が不足するとヘモグロビンの量が少なくなって全身への酸素の補給が低下してしまいます。
ちょっとからだを動かしても、胸がドキドキするのは、鉄不足のために起きた酸素不足のためなのです。

また、女性の場合には、月経や出産による失血があります。月経血の量については個人差がありますが、平均して、一回の月経によって失われる血液の量は45mlで、うち鉄分は20mgに達します。
さらに中年になって子宮筋腫や子宮内膜炎があって、このため月経量が多い女性は、鉄欠乏性貧血になりやすいわけです。いずれにしても女性は男性よりもヘモグロビンのもとであるたんぱく質と鉄分をしっかりとらねばなりません。 

こうしたことからわかるように、体内の部分的な健康問題は、基本的に全身の生理的機能、とくにたんぱく質合成力を高めることによって根本的に改善されていきます。 

骨粗鬆症、貧血の方は、歯周病の治りもよくありません。口腔内は身体の一部であることをふまえ健康に留意して下さい。

筋力維持に役立つダンベル運動

ダンベル体操1      

ダンベルを握り締めて内側に巻き込み、固定すること。

  ダンベル体操2

動作を区切らず、ゆっくりじっくり動かし続けること。

ダンベル体操 

足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ち、上体前傾後に腰を落して膝をおり、中腰の姿勢を守ること。

ダンベルの重量は300gから2kg程度の軽量のものを使うこと。

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