『過剰な力』 歯ぎしり・くいしばりが起こると。。
「歯がかけた」「金属が取れた」「治してもらったところが壊れた」などの予測のつかないトラブルが起こります。
同じ治療をしているのに、計画通りの進む患者さんと治療がうまく進まない患者さんがいる、もちろんお一人ごと状態が違っているので違いがあって当たり前ですが、かぶせ物が短期間のうちに取れたり、壊れたり、歯が割れたりするケースがあります。
これは歯に加わる「過剰な力」が原因です。
「割れた」「取れた」「壊れた」は、
一見突然起こるようにみえますが、無理を重ねた末の結果の現象です。
本人が気づかないうちに歯ぎしりやくいしばりをして、特定の場所にギリギリと連日力が加わり揺さぶられていれば、取れたり、壊れたり、歯が割れても不思議ではありません。
↑歯冠が割れている症例
■ストレス社会の歯ぎしり・くいしばり
歯科医は口の中の状態を見て、歯ぎしり、くいしばりの痕跡を見つけだします。
「歯ぎしりしていませんか?」
とお聞きしても、たいがいの方は、不審そうな顔をするばかりです。
歯ぎしり・くいしばりがある人の口の中
押見 一先生資料より
1 唇の周りの筋肉が強く、ミラーをいれても口が十分開かず、治療がしずらそう
2 頬の内側の筋肉が勝手にピクピク動く
3 くさび状欠損(歯ぐきの近くの歯の根元がえぐれている)がある
4 歯のかみ合う面が摩耗してぺったんこになっている
5 前歯の先が溝状に凹んでいる
6 奥歯の金属のかぶせものにシワがよっている
7 詰め物(金属、差し歯)がよく取れる
8 詰め物やかぶせものの周りによくむし歯ができる
9 ブリッジが壊れやすく、歯が折れてしまう
10 かぶせもの(金属冠、ブリッジ)を噛んだときの高さが気になって仕方ない
11 エックス線をとる時の装置をつい強く噛んでしまう
12 骨隆起(下前歯の裏にある丸く隆起した骨)がある
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■多くの人がしている歯ぎしり・くいしばり
上下の歯はいつもかみあっているのは、ふつうだ。と思っている方がいます。その方はくいしばりのクセがあるはずです。
ごはんを食べている時間以外で、上下の歯が触れあっているのは1日で5分程度です。
ところが、ストレス社会の中、ストレスの多い人は、仕事中、勉強中、家事の間、就寝中など、さまざまな場面で長時間ギシギシ軋ませています。
奥歯の力は60kg以上ともいわれますが、この力で揺さぶられては、エナメル質は壊れくさび状欠損になったり、歯が割れても不思議ではありません。
歯ぎしり・かみしめのコントロール
現代社会のストレスの中、歯ぎしり・くいしばりは頻度と程度の差こそあれ誰もがしています。
「無意識でしているものをコントロールできるものか?」と思うかもしれません。
大丈夫です。日中のくいしばりなら気づきさえすれば減らすのは容易です。また、就寝中の歯ぎしりも減らすことができます。
- 歯科医院で歯列に合わせたマウスピースを作り、食事中以外ははめて自己観察していただく方法があります。激しく歯ぎしりをする方は1日で穴があきます。
これは、なかなか自覚できない歯ぎしり・くいしばりを発見するのに一番簡単な方法です。 - 真の原因である忙しい日常をかえる、リラックスするのが一番よいのです。しかし、仕事を辞めるわけにはいきません。次の策として、イメージトレーニングです。「絶対やめる」ではなく、「やめたらリラックスするかな」とよい方向に考えて下さい。スポーツ選手が自己暗示で最高の実力を発揮するように行っている方法です。
- スポーツや重いものを持つとき、注意して下さい。
- 「上下の歯が、当たっていませんか?」と時々問うて下さい。
- 高い枕は噛みしめやすくなるので避けましょう。
むし歯、歯周病、歯ぎしり、くいしばりのどれもがセルフコントロール以外での予防方法はありません。
医療全般、どんな高度医療が発達しても、最終的にはご自分の健康はセルフコントロールによって守られます。
健康に留意し、歯科に限らず身体を大切にして下さい。
※マウスピース製作は保険適応です。